ジェレヌクの個性と、生きた表情を
 
  今回はアフリカに棲むガゼル亜科で、首が長く耳が大きいのが特徴の「ジェレヌク」。動物百科や図鑑などで調べ、デザインを決めたが、制作上難しかったのは、細く長い首と足、首の細さに比較して頭が小さい上、耳や角が大きいことに手を焼いた。最近流行の“小顔美人志向”同様、扱いが面倒だ。
 足が細く、首が長い動物の場合、立ち位置でのバランスが難しい。小さな頭の中に、長く曲がった角と、大きな耳を縫い合わせていく。縫い上がったら裏返しをするのだが、頭でっかちで首が細く長いと裏返し作業が手間取る。
 また小さい顔の中に、目の周りの白い部分や鼻の黒い部分を縫い合わせるのだが、この切り替え部分、その動物の個性になり、生きた表情をしていなければならない。できあがりの表情を読む手先の器用さが求められる。足の返しも同様だ。細い足に大きな蹄(ひづめ)と甲の部分が裏返しを妨げる。今回のジェレヌクの場合、まだ短い起毛とはいえ毛羽立ったボア地だけに裏返しは面倒だった。
これらの作業、まさに“難産”なのだが、それだけに、ぬいぐるみ制作にささやかな喜びを感じるときでもある。
 ぬいぐるみに求められる、可愛らしさとリアリティー。可愛らしさを追いすぎるとごく普通の“ぬいぐるみ”になってしまう。半面、リアリティーを求めすぎると表情がきつくなったり、ぬいぐるみとしてのバランスを崩しかねない。その両立にはいつも気をつけているが、難しい。
S・Nさんからは、またまたお褒めの言葉をいただいた。
 「ジェレヌク、大感激です。世界中でジェレヌクのぬいぐるみをもっているのは、そんなにいないと思います。かっこよくてうれしいです。首の角度もちょうどいいです。」
 「首の角度もちょうどいい」。うれしい言葉です。

《ジェレヌク》 エチオピアからアフリカ中央部のブッシュの多い乾燥地帯に生息する。体色は赤黄色で、上部(背筋)に褐色のバンド、腹部は白い。頭部は小さく首が長い。眼下腺は大きい。体重30~50kg。角は雄だけで、約35㎝。雌と子どもは2~5頭の群れ、おとな雄はなわばりをつくる。後ろ足で立ち上がって、高い所の木の葉を食べることができる。ガゼル亜科。(『朝日百科』から)

ジェレヌク